能ある鷲
		文字
		解説
			「能ある鷹は爪を隠す」ということわざがある。 鷲と鷹は、どちらもタカ目タカ科に属し、大きいほうが「鷲」で、中型から小さいものを「鷹」と呼び分けているのだそうだ。 ところで、「爪」は、『下に向けた手の形の象形文字。元は「つかむ」のみの意で、「つめ」には「叉」の左側に点を打った文字があったが、 後代に「爪」が「つめ」の意も含むようになった』とのことである。「下に向けた手の形の象形」ということは、 いかにも爪らしい造形の文字である「爪」は指の先にある爪の象形ではなかったということである。 そこで、本作品では「指の先にある爪」のみを象った。 外形線に見える部分は爪を抽象化したもので、その内側は、指の腹を押したときにできる爪のピンクの部分（爪床）の微妙な斑を表し、 偶発性も狙った墨の滲みによって世界地図をイメージさせ、分断・抑圧・混沌状況下の世界情勢を想起させた。 2025年春の今、鷲を国鳥とする国が世界を揺るがしている。冗談、はったり、脅し、慣わしの破壊の一方、予想外の事態が表面化するなり恥ずかしげもなく軌道修正することを君子豹変と呼ぶのか、 無計画と呼ぶのか。今までの過度な趨勢を崩すことで、雨降って地固まる方向にいくのか、はたまた単に創造と破壊の歴史を繰り返しているだけなのか。 世界は、この混迷の極みとも思える言動の裏に、実は計算された意図が潜んでいるのではと、不安を抱いている節もある。 「２４時間以内に・・・」などの大口・「５１番目の州・・・」などの軽口・「700％の・・・」などの大嘘を繰り返す「鷲」は、実は見事な「爪」を隠しているのだろうか。 なお、乾燥前に撮影した本画像から、情勢の「水際」感・「背水の陣」感を見て取っていただければ幸いである。

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