あざとい−演出される心
		文字
		解説
			前作「偽善（性善と性悪�U）」では、周囲から期待される意識的・無意識的な言動について取り扱ったが、 本作では、それと同様で、かつ、さらに平易でポップな「あざとい」にスポットを当てる。 「あざとい」の語源は、ネット情報には、『「浅聡い」説』『「浅遠い」説などがある。一方、漢字は、「小聡明い」が一般的なようだ。 しかし、どれも、言葉の意味から文字をあてている感がぬぐえない。どうも「あざとい」は１８世紀ごろから使われ始めた言葉らしく、その時に日本に存在した漢字にふさわしいものがなかったため 、熟語をあてて、あたかも訓読みのように見せているようだ。これは、「ためらう」を「躊躇う」と書くのと同じ感覚だ。つまり、「あざとい」には最適な単漢字がない、ということになる。 「あざとい」の現在の使われ方は、以前のようなネガティブな意味は減少し、遠回しな褒め言葉として使われることさえある。また、以前は女性の言動のみに使われていたが、 アイドル文化の変容からか、男性の言動にも使われるようになった。 現在、「あざとい」は、抜け目がない・ずるいなどの印象を主にもつ表現であるが、基本的には「計算された演出がある」というニュアンスを含むものといえる。 とはいえ、当人がそれを狙ったかどうかは関係なく、もっぱら見る側の主観によって「あざとい」と判断されるような場合も多々ある。 このあたりが、意識的偽善および無意識的偽善と似ているが、相違点は、結果が利益誘導（自分をよく見せる）のみであるかどうか、ではなかろうか。 もちろん、その「あざといしぐさ」を見た・感じた者が幸せを感じることもあるだろうが・・・ 近年の使われ方における「あざとい」は、私には「浅聡い」や「小聡明い」という雰囲気よりは、「広義の愛（承認・受容）を欲する、計算された下心」に思える。 そこで、本作品は、「愛」「貝」「心」を融合した文字とした。「愛」は欲求の目的で、「貝」は「計算」の構成であり、お金を意味する欲の象徴で、「心」は人情でもある。 結果的に、１つの文字に「心」が上下２つ存在してしまうが、上段は篆書で、下段は草書で書き、篆書の最下部が篆書の「貝」の上部と融合することで「計算された心」を表現した。 また、下段の「心」は、「貝」の下部と融合し、下心でありながらほほえましさをイメージした。なお、最上段は、相手によってあざとさを変える二枚舌・三枚舌を、 最下段は、裏でペロッと舌を出している様を表した。

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